古美術良

一器多用

それは一つの器を何通りにも使うこと。家庭ではごく当たり前のことです。 

気分に合わせて料理を盛り付けたり、感性の赴くままにお花を生けたり。

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やはり一器多用にはシンプルな形のものが向きであり

特にこれからの季節は、蕎麦猪口が万能に活躍をしてくれるお勧めの器です。

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蕎麦猪口はそばのつけ汁入れですが、約200mlの容量と口広がりの筒型は実に使いやすく

落ち着いた色合いはカラフルなデザートを盛り付けるのに最適です。

また洋風なものを入れてみれば、器の日本的な風合いと相まって食卓を豊かに彩ってくれます。

他にも一人前の茶碗蒸しをしてみたり、ディップソース入れにしてみたり。

アイディア次第で幾通りにも使えそうです。

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酒器と煎茶碗のはなし

今日一般的に使われる煎茶碗とは違い、ごく少量のトロッとした濃い煎茶を楽しむことが主流だった時代

碗のサイズは非常に小さく、磁器のものが中心でした。

煎茶の古書である『煎茶早指南』にもこのようにあります。

「茶わんかたちさまざまあれども、いずれもちいさくして、内はしろく

こうだいのたかきををよしとす。内の白きは、煎茶もっとも色を賞するものゆえなり。」

また、このような小さな碗で茶を飲むことになった由来は

文人たちが手近な酒杯を利用したことに始まるともいわれています。

ここにご紹介する九谷の酒器は、まさに煎茶碗として、

小さな菓子皿として多用に楽しむことが出来るお品です。

ローリーポップキャンディの様なデザイン・トリコロールの色彩にはどこかモダンな印象も感じられます。

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一器多用を始めてみると、見慣れた器が新鮮にみえることに驚かされます。

もちろん「この器には絶対にコレ!」という強い信念にも大変共感できます!

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器はうまくカッコよく使おうとすると、多少の経験や気配りも必要になります。

しかしルールなどないのですから

気の向くままに、

自由に。

うつわの可能性を見つけ愉しんでみてはいかがでしょうか。

written and photos by Igarashi